Punkchill 3rdアルバム『真昼の王国』発売記念ページ[その2]

「真昼の王国」によせて

2008年10月8日リリース・Punkchill 3rdアルバム『真昼の王国』発売を記念して、こぐまレコード主宰・biwacovicよりメッセージが届きましたので、掲載します。

Punkchill 3rd album
[真昼の王国]
2008.10.8 release

1. 数字のしずく
2. 穴
3. アマチュア
4. カミカ通りで
5. アフターナイトフィーバー
6. ヤヌス
7. 果ての果て
8. 沼を去る
9. WPW
10. toogaroo
11. 大人になって
12. 遠い行進
[Amazon] [Tower] [bridge] などでご購入できます

そう言えば2年前、「まずは僕らのレーベルからこのCDを出せたことを喜びたい。」と2ndアルバム「アゲイン」発売時に僕は書いた。2008年になって彼女たちはまたアルバムを作ってくれた。同じことを言うのも芸がないが、やはり同じような気持ちでいる。

ムツゴロウは「動物王国」を作った。毎日放送は「野生の王国」を制作し、ヘンリー・ダーガーは「非現実の王国で」を書き、インディ・ジョーンズは「クリスタル・スカルの王国」を冒険した。ブラジルはサッカー王国だし、イギリスは本当に王国だ。この世界には今までに多くの王国が築かれ、そして滅んだ。そんな中でプンクチルは「真昼の王国」を作った。なぜか?ただ作りかったからだろうと思う。

冒頭の「数字のしずく」がこぼれ落ちる瞬間から、「遠い行進」のまるで映画のロングショットのようなエンディングまで、短い時間だが一瞬のまぼろしのような世界が現れる。そしてもう一度再生ボタンを押せば、同じことが起きる。録音とは、そんな風に「世界を閉込める」行為なのかもしれないし、このアルバムにはそんな音が閉込められているような気がする。バンドと共同プロデュースの中村宗一郎さんのかけた魔法なのかもしれない。残響のひとつにも意味があるような気がしてしまう。いや、きっと意味はある。

たぶんこうしている間にも、世界には無数の王国が生まれ、そして泡のように消えていっているに違いない。僕らが見る夢は、再生することも叶わずに生まれては消える。ただ恐れをしらない勇者や愚かな人たちは、その夢の王国を捕まえようとする。このアルバムはそんな試みの一つである。

このアルバムを聴いた人の頭の中に、一瞬ほかのだれか見た夢の世界が現れる。それは共有出来そうで、出来なくて、その有り様は音楽そのものである。つかめそうで、つかめない。人はまぼろしだとか夢だとか名付けるが、正しい名前を言い当てた者は誰もいない。その名前を言い当てた者が、「真昼の王国」の王になるのだろう。

2008.09.21 biwacovic(こぐまレコード)